結論:ダメなことはありません。相続した実家を早く売ることが、ご家族にとって一番よい場合もあります。ただ、私なら、売るのを急いで決める前に「名義」「家族の同意」「税金」「片付け」「相続放棄をするかどうか」の5つを先に確かめます。この順番を守るだけで、あとから「こんなはずではなかった」となることを減らせるからです。
【初回相談0円】相続不動産の無料相談で、一緒に整理できること
- 相続した実家を「今売ってよい状態か」の確認
- 名義・家族の同意・税金・片付けの順番の整理
- 相続放棄を考えている場合に、先にしてはいけないことの確認
代表の松本が直接お話を伺います。相談は依頼ではありません。準備がそろっていなくても大丈夫です。
こんにちは。一般社団法人 士業会 代表理事の松本 淳一です。私は不動産の仕事に40年近く携わってきて、その中で相続した家についてのご相談もたくさん伺ってきました。
このコラムは「どうしてダメなのですか?」というシリーズです。みなさんが心の中で思っている素朴な疑問に、私ならどうするかをお話ししています。今回の疑問は「相続した実家、すぐ売ってはダメなのですか?」です。
先にお伝えしたとおり、すぐ売ることはダメではありません。ただ、相続した家を売るときには、法律、登記(家の持ち主を国の記録に書くこと)、税金、家の値段、そして家族の気持ちが一度に重なります。一つの面だけを見て決めると、別の面で困ることがあります。だから私は「全体を一緒に見てくれる味方を最初につける」ことをおすすめしています。
「早く売りたい」と思うのは自然なことです
まず、早く売りたいというお気持ちは、まったくおかしなことではありません。むしろ、とても自然なお気持ちです。
早く手放したい理由は人それぞれ
ご相談を伺っていると、早く売りたい理由はさまざまです。「遠くに住んでいて管理ができない」「固定資産税(家や土地にかかる毎年の税金)を払い続けるのが負担」「空き家のままだと近所に迷惑をかけないか心配」「親を思い出してつらいので、気持ちに区切りをつけたい」。どれも、もっともな理由です。
誰も住まない家は、持っているだけで手間と費用がかかります。早く決めたいと思うのは、責任感の強さの表れでもあります。
不動産会社のすすめにも、ちゃんと理由がある
不動産会社に相談すると「早めに売り出しましょう」と言われることもあると思います。これは、空き家は時間がたつと傷みやすいこと、買いたい人が見つかるまでに時間がかかることなどを、経験からよく知っているからです。不動産会社には家の値段や売り方のくわしい知識があり、とても頼りになる存在です。
ただ、不動産会社の担当は主に「売ること」です。名義や相続放棄、税金の細かい判断は、それぞれ別の専門の方が担当する分野です。どなたが悪いということではなく、担当する範囲が違うのです。だからこそ、売る話を進める前に、全体を一度ながめておくことが大切になります。
売る前に確かめたい5つのこと
私が「すぐ売りたい」というご相談を受けたとき、最初に一緒に確かめることを表にまとめました。
| 確かめること | なぜ大切か | 確かめ方の例 |
|---|---|---|
| 名義(家の持ち主の記録) | 亡くなった親の名義のままでは、多くの場合、売る手続きに進めません | 法務局で登記の記録(登記事項証明書)を取る |
| 家族の同意 | 相続人が何人もいるときは、誰が引き継ぐか話し合いが必要です | 相続人が誰かを戸籍で確かめ、話し合う |
| 相続放棄をするかどうか | 家財を処分したり家を売ったりすると、放棄できなくなる場合があります | 借金がないかなど、財産全体を先に調べる |
| 税金 | 売ったときの税金や、使える特例の条件があります | 売る前に税金の見通しを確かめる |
| 片付け | 大事な書類や形見を捨ててしまうと取り戻せません | 捨てる前に、残すものを家族で決める |
名義が親のままだと、すぐには売れないことが多い
家を売るとき、買う人は「この家の持ち主は誰か」を登記の記録で確かめます。記録が亡くなった親の名前のままだと、多くの場合、まず相続人の名前に書きかえる手続き(相続登記)が必要になります。
また、相続登記は2024年4月から義務になりました。相続で家を取得したことを知ってから、原則3年以内に手続きをすることになっています。売る・売らないにかかわらず、名義のことは早めに考えておきたいところです。くわしくは「相続した不動産を売りたい。私なら、売り出す前に「売ってよい状態か」を確かめます」でもお話ししています。
家族みんなが同じ気持ちとは限らない
兄弟姉妹がいる場合、「早く売りたい」人もいれば「しばらく残しておきたい」人もいます。誰がこの家を引き継ぐのか、売ったお金をどう分けるのか。相続人の話し合いがまとまらないうちに売る話だけが進むと、家族の関係がぎくしゃくすることがあります。
私は、売るかどうかよりも先に「家族みんなが納得できる形は何か」を考えるようにしています。家族の気持ちは、書類には出てこないけれど、相続でいちばん大切なことの一つです。
相続放棄を考えているなら、先に手をつけないことがある
親に借金があるかもしれないときは、相続放棄(財産も借金も引き継がないこと)を考える方もいます。相続放棄の期限は、自分のために相続が始まったことを知った時から、原則3か月以内です。
ここで気をつけたいのは、相続放棄を考えている人が、家財を処分したり家を売ったりすると、相続することを認めたと見なされて、放棄できなくなる場合があるということです。「早く売りたい」というお気持ちがあっても、借金があるかどうかがはっきりしないうちは、売る話や大きな片付けは少し待って、先に財産全体を調べることをおすすめします。
税金のことは「売る前」に確かめます
家を売ってお金が入ると、税金がかかることがあります。そして、使える特例があるかどうかで、手元に残るお金が大きく変わることがあります。
3,000万円を差し引ける特例には条件がある
親が住んでいた家などを相続して売るときは、条件を満たすと、売って得た利益から最大3,000万円を差し引ける特例があります。ただし、この特例には「いつまでに売るか」という期限や、家の建てられた時期、売る前の家の状態など、いくつもの条件があります。
「すぐ売る」こと自体は問題ありませんが、条件を知らずに進めてしまうと、使えたはずの特例が使えなかった、ということも起こりえます。特例のくわしい確かめ方は「相続した空き家を売るとき、税の特例を確認するには?」をご覧ください。
相続税の申告と、売る時期の関係
財産の額によっては、相続税の申告が必要になります。相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。家を売ったお金で相続税を払おうと考える方もいらっしゃいますが、その場合は、売れる時期と申告の期限を並べて考える必要があります。
相続税がかかるかどうか、いくらくらいになるかは、財産の内容や家族の状況によって変わります。ここは税金の専門の先生に確かめていただくところです。
片付けは「捨てる前に残すものを決める」
実家を売るとなると、家の中の片付けも必要になります。ここでも、急ぎすぎないことが大切です。
大事な書類は、片付けの中から見つかる
親の家には、通帳、権利証(家の持ち主であることを示す書類)、保険の書類、借入れの書類、そして遺言書が残っていることがあります。これらは相続の手続きにとても大切なものです。業者さんにまとめて片付けをお願いする前に、家族で一度、書類を探す時間をとってください。
残しておきたい書類については「親の死後、実家をすぐ片付けていい?残しておきたい書類と情報」でくわしくお話ししています。
形見の品は、家族の気持ちを聞いてから
写真やアルバム、手紙、親が大切にしていた品物は、一度捨ててしまうと戻りません。ある方が残したいと思っていたものを、別の方が知らずに処分してしまい、気まずくなったというお話も聞きます。片付けを始める前に「これだけは残したい」というものを、家族それぞれに聞いておくと安心です。
私なら、こんな順番で進めます
ここまでのお話をふまえて、私ならどう進めるかをお伝えします。もちろん、ご家族の状況によって順番が変わることもあります。
まず「全体」を書き出してから、売る話に入る
私はまず、相続人が誰か、財産は何があるか(借金も含めて)、家の名義はどうなっているか、家族はそれぞれどう考えているか、を紙に書き出します。全体が見えてから、「売る」「残す」「貸す」などの選び方を考えます。
そのうえで売ると決まったら、家の値段の見通しを立て、税金の特例が使えるかを確かめ、名義を整え、片付けを進め、売り出す。この流れにすると、途中で手が止まることが少なくなります。
一つの分野だけでなく、全体を見てくれる味方を最初につける
相続した家のことは、法律、登記、税金、家の値段、家族の気持ちが重なり合っています。それぞれの専門の方は、自分の担当の分野では本当に頼りになります。ただ、相談する方からすると「どこから、誰に聞けばいいのか」が分かりにくいものです。
だから私は、最初に全体を聞いてくれる味方をつけることをおすすめしています。誰に相談するか迷っている方は「相続は誰に相談する?」もあわせて読んでみてください。
士業会では、どんなふうにお手伝いするのか
士業会は、違う専門を持つ仲間が、ワンチームで一人の相談者の問題を一緒に考える団体です。
まず代表の私が、お話を伺います
士業会では、まず代表の私、松本がお話を伺い、必要に応じて先生方に確認しながら、何から始めるかを一緒に整理します。「売るかどうかもまだ決めていない」「何が分からないのかも分からない」という段階でも大丈夫です。相談は依頼ではありませんので、話を聞いてみてから考えていただければ十分です。
相談の前に用意できると話が早いもの
そろっていなくてもかまいませんが、もし手元にあれば、固定資産税の通知書、家の権利証や登記の書類、親の通帳や借入れの書類などをお持ちください。家族の誰が相続人になりそうか、メモにしておくだけでも整理が進みます。
よくある質問
相続した実家は、どれくらいの期間で売るのがよいですか?
決まった正解はありません。家の状態、家族の考え、税金の特例の期限などによって変わります。期間を先に決めるより、名義・家族の同意・税金・片付け・相続放棄の判断を確かめてから、時期を考えるのがおすすめです。
親の名義のままでも、売ることはできますか?
多くの場合、売る前に相続人の名義に書きかえる手続き(相続登記)が必要になります。相続登記は2024年4月から義務になっていて、相続で取得したことを知ってから原則3年以内に行うことになっています。
相続放棄を考えています。先に家を片付けてもいいですか?
相続放棄を考えている人が、家財を処分したり家を売ったりすると、放棄できなくなる場合があります。相続放棄の期限は、相続が始まったことを知った時から原則3か月以内です。片付けや売却の前に、まずご相談ください。
兄弟の一人が反対しています。売ることはできますか?
相続人が何人もいる場合は、誰が家を引き継ぐかなどを話し合って決める必要があります。気持ちのすれ違いが原因のことも多いので、まずはそれぞれの考えを聞くところから始めるのがよいと私は考えています。
売ったときの税金は、どれくらいかかりますか?
売った値段、親が家を買ったときの値段、使える特例などによって大きく変わるため、ここで金額をお伝えすることはできません。条件を満たせば売却益から最大3,000万円を差し引ける特例もありますので、売る前に確かめることをおすすめします。
相談すると、売ることを決めないといけませんか?
いいえ。相談は依頼ではありません。売る、残す、貸すなど、どの道を選ぶかを一緒に整理するための時間です。お話を聞いたうえで、ご家族でゆっくり考えていただければ大丈夫です。
まとめ
相続した実家をすぐ売ることは、ダメではありません。ご家族にとって一番よい選び方になることもあります。
ただ、私なら、売るのを急いで決める前に、名義、家族の同意、税金、片付け、そして相続放棄をするかどうかを確かめます。とくに、借金があるかどうか分からないうちに家財を処分したり家を売ったりすると、相続放棄ができなくなる場合がありますので、気をつけてください。
相続した家のことは、いくつもの分野が重なっています。一つの分野だけでなく、全体を一緒に見てくれる味方を最初につけておくと、落ち着いて次の一歩を選べます。
違う専門の仲間が、ワンチームであなたの問題を一緒に考えます。士業会を、あなたの味方に。
一般社団法人 士業会 代表理事 松本 淳一
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